2020年2月9日(日)、東京・練馬区立石神井公園区民交流センターで、「ACTF2020」が開催された。ACTFは「アニメーション・クリエイティブ・テクノロジー・フォーラム」の略称で、国内アニメーション制作の最新情報交換の場として設けられたものだ。毎年冬に開催されている。
2020年は14プログラムのセッション・セミナーが実施され、会場には様々な企業・団体のブースが並んだ。多くのアニメ関係者で賑わった。
Toon Boom Animationも昨年に引き続き参加した。展示デモストレーションでは、来場者がHarmony(ハーモニー)やStoryboard Pro(ストーリーボードプロ)といったソフトを手に取り、説明に聞き入った。
今年のもうひとつの注目は、Toom Boomによるセミナーの開催だ。『デジタル作画とカットアウトを使い分ける北米スタジオのワークフロー』とタイトルして、制作のデジタル化の現状を解説し、デジタルのスムーズな導入を提案した。
セミナーの冒頭でToon Boom日本支社のメンバーをまず紹介。支社長の小口尚思氏、マーケティングマネジャーの遠山怜欧氏、セールスマネジャーのガリーナ・ブートワ氏の3人が挨拶した。
続いて本社から来日したテクニカル・ソフトウェア・セールススペシャリストのハリー・ラベロマナンソア氏が登壇し、世界のアニメーション制作の最新情報を紹介。そのなかでToon Boomが目指していること、さらにそれらが同社の製品にどう反映しているかを語った。
トークの大きなテーマは、デジタル作画とカットアウトの使い方である。ハリー氏が最初に提示したのは、「ハイブリッド」の考え方について。
アニメーション業界では「ハイブリッド」というと、映像における2Dと3Dの併用を指すことが多い。しかしハリー氏はこれを「ペーパー(紙)とペーパレス(デジタル作画)」、「作画とカットアウト」の併用として定義し直す。ハイブリッドを実現することで、デジタルの導入はよりスムーズに、そして手描きとカットアウト双方のメリットを活かせるというわけだ。
ハリー氏は、日本のアニメスタジオのデジタル化は、作画アニメを中心に目指されていると見る。北米では、Harmonyを使ったカットアウトアニメーションの制作が目立つが、これらは対立するものでないという。100%カットアウトでアニメーション制作する必要はなく、ハイブリッドとして作画アニメと併用することで効率化が実現する。
実はこうした例は日本に限ったことではない。世界のスタジオでは現在、デジタル作画とカットアウトのハイブリッドが次々に導入されている。
セミナーでは作品がいくつか紹介された。『クロース』『Green Eggs and Ham』『怪奇ゾーン グラビティフォールズ』『Snoopy in Space』といった映画や配信プラットフォームでも注目された話題作である。これらはいずれも制作にHarmonyを使用している。
このうち『グラビティフォールズ』はまさにハイブリッド作品で、身体のみデジタル作画で顔はカットアウトであった。カットアウトを使うことで、素材の共有化、再利用が可能になり、効率化が進んだ。
Toon Boom 注:上図は、あくまでヒアリングに基づく目安の数値。様々な要素で変化します。
ハリー氏は、日本のスタジオは紙からデジタル作画に移行することで効率性を向上させることが可能だという。カットアウトを導入することで、さらに効率がアップするのでないかと話す。
特にカットアウトのメリットのひとつとして、デジタル上のコラボレーションの容易さを挙げたのは印象的だった。フリーランスのアニメーターが多い日本に、カットアウトが適しているとの指摘だ。
アニメーション制作のデジタル化は不可避で、いまでは誰もが必要と考える時代になった。しかしその先の「どのように?」は摸索中の場合が少なくない。あまりにも多くの選択肢があり、また一足飛びに新しい表現、新しいワークフローに移行出来るかとの不安もある。
今回Toom Boom が提案するデジタル作画とカットアウトの併用の考え方は、実現性の高さの点と効率性の実現との点で多くの参加者の関心を惹きつけたように思えた。デジタル作画とカットアウトの併用は、今後日本でも導入が進んでいくのかもしれない。
ACTFでは45分かけてお話しした本セミナーを、7分弱の短い動画にまとめてToon Boomの公式YouTubeアカウントにて公開しました。もし興味がある方は、こちらでご覧ください。また、今後もクリエイターの役に立つ情報を発信していきますので、気になる方はYouTubeアカウントの登録をよろしくお願いします。