Toon Boom日本支社は、Toon Boomのソフトウェアと日本のクリエイターたちの関係にフォーカスしたインタビューシリーズ『Toon Boom Interview Files』の連載をスタートします。第1弾となる今回は、2022年春にTOKYO MX、BS11で放送されたTVアニメ『ヒーラー・ガール』の原案・監督を務めた入江泰浩氏のインタビューをお届けします。 入江氏が、「今作の肝であるミュージカルシーンの実現に大いに役立った」と語るように、彼の制作に欠かせないツールだった絵コンテソフトStoryboard Pro。本記事では『ヒーラー・ガール』の事例からStoryboard Proの可能性についてお聞きしました。 続きを読む »
Toon Boomは海外共同制作へのパスポート
皆さん、こんにちは!
Toon Boomブランドエヴァンジェリスト担当の山口と申します。本日は、カナダ・モントリオールからブログを書かせていただきます。
ブログの表題に入る前に、先ず簡単な自己紹介させていただきます。
両親は日本人ですが、私は、フランス・パリで生まれ育ち10年程前にカナダ・モントリオールへ移住しました。母国語は日本語ですが、フランスとカナダの二重国籍を持ちながら、これまでのキャリアでも常にアニメコンテンツ産業に特化した日本と海外をブリッジする仕事をしてきました。
カナダはアニメーション産業が盛んな国です
カナダ・モントリオールに引っ越したきっかけは、カナダのアニメーション産業の理解を深めるためでした。フランスでは日系大手アニメ会社のパリ支局に所属しておりましたが、海外共同制作でカナダを調査したことをきっかけに好奇心が高まり、自分の目で見たいと決心してフランス生活を卒業して、モントリオールに移住しました。
カナダのクリエイティブ産業は盛んです。主な特徴は次の通り。
- 行政からの映像産業の支援(助成金や税額控除)
- アニメーション、VFX、3Dやゲームスタジオが多い
- 様々な風景や建築があり、映画撮影が多い(多くハリウッド映画がカナダで撮影されます)
- アニメーションの専門学校も多く、現役のプロが講師となり、業界と連携を取りながら、現場が必要とする次世代のクリエイター育成
- 産業としてエコシステムが成立している:技術面・IT産業にも力を入れており、アニメーション・映像産業では、モントリオールを拠点とする研究開発も多く見られます
- カナダは(日本を含む)60カ国以上と海外共同制作協定を締結しております。
Toon Boom本社もモントリオールが拠点です。ちなみに、3D映像ソフトのAutodeskさんもFilm & Entertainmentも同じくモントリオールで開発されております。
アニメの海外共同制作とは?
海外のアニメーション業界では、「国際共同制作-International Co-production」という言葉をよく耳にします。
この国際共同制作について、簡単に概要を説明させていただきます。
海外では90年代後半から、主に欧州各国の政府が、アニメーション産業の経済的価値に注目するようになりました。政府はコンテンツ産業や知的財産の展開に力を入れるようになり、本国のクリエイターやスタジオを活用して制作された作品を公共・民間放送局が放映して「自国のコンテンツ」を発展する姿勢を持ち始めた時代でもあります。
しかしながら、アニメーションの制作費を捻出するためには多数の出資パートナーが必要になります。
国際共同制作は、制作会社や配給会社等の複数のパートナー、放送局が話し合い制作や予算、スケジュールに合意しながら技術や資金を出し合って作品を創る方式です。
なお、国際共同制作協定を締結している国の制作会社は、同じ知的財産(IP)が(協定の条件を満たしていれば)、各々の国で「国作」と認識され、政府の助成金や制作費を補助する支援ツールを活用して一部の資金を調達できます。
つまり、同じ作品が双方の国で「国作」と認められることは、作品が「二重国籍」を持つということになります。
これにより、各出資者のリスクを低下し、互いの国の放送展開先を確保できることになります。
海外共同制作をスムーズに進めるために重要なこと
共同制作においては、作業環境が統一していれば、データ共有により、共同作業がより効率的になります。
例えば、フランスとカナダの国際共同制作で、両国はプリプロとポスプロ作業を行い、その他の作業を韓国やマレーシアのスタジオへ分担するという流れは良く見られます。
国際共同制作では、発注・下請けの関係ではなく、共同作業の環境で制作されます。同じ制作で多数のパートナーと共に同じカットを共有し合い作業するケースが多いです。複数のクリエイターやアニメーターが作業するからこそ、同じツールを利用する利便性を重要視します。
例えば、アメリカのメジャー作品『The Simpsons』や『Bob’s Burger』は、アメリカとアジアのスタジオが制作している作品です。パンデミック状況の中、これらの作品の制作会社は時差の関係なく、オンラインでデータを共有できる作業環境で制作が進行され放送が延期されなかった事例がVarietyの記事『Animation production still going strong despite coronavirus crisis』(簡易翻訳版)が話題となりました。
Toon Boomは創立以来、2Dアニメーションにおいて、このような環境を多くのスタジオに提供してきました。技術的な面では、Toon Boomのソフトは2度エミー賞を受賞し、業界の基準ツールとして評価されております。
一方、国際共同制作が発展する中、Toon Boom社は、多国のアニメーション産業とその経済展開に参画してきました。アナログからデジタルへの環境の切り替えが、作業への効率化や生産性だけでなく、長期的に産業の発展に繋がるというフィロソフィーを発信してきてました。
設立以来、25年間このフィロソフィーに同感するToon Boomコミュニティーは常に拡大してきました。今は、世界のクリエイターからスタジオをはじめ、学生からベテランアニメーター達が集まるサークルとなり、多数の2Dアニメーションの教育機関も次世代のアニメーターにToon Boomでアニメーション制作を教える次第となりました。
Toon Boomでアニメーションを制作することで、海外の2Dデジタルアニメーションコミュニティー内で多国のパートナーと繋がることができます。いわば、国際共同制作のパスポートです。
異文化への理解
国際共同制作の現場では、色んな「壁」を乗り越えていきます。時には乗り越えられず、失敗から学ぶこともあります。しかし、国境を越え、言葉や作業の文化の壁を乗り越えて、一緒に作品をチームとして制作することにより、有意義な刺激を貰える経験でもあります。プロとして、個人としても多いに学ぶこと成長できるチャンスでもあります。信頼関係を築き上げながら、また新しい作品を創る「仲間」、ネットワークが平がるチャンスでもあります。
新しい年代の節目として、この度、初めて日本へ移住する運びとなりました。これまでは、出張や休暇を取って日本に家族やクライアントへに会いに行っておりました。
二重国籍を持つ私ですが、今度は日本で初めての生活、馴染みのある日本、自分のルーツへ戻りながら、これまでの海外の経験を活用しつつ、Toon Boomのブランドエヴァンジェリストの仕事も頑張っていきたいと思います。
また、日本でも皆様にお会いできるの楽しみにしております。
以上、モントリオールからのブログでした!
改めて、Toon Boomの山口と申します。
Toon Boom製品に関するご質問や、情報交換をご希望の方は、気軽にお声掛けください。ayamaguchi[at]toonboom.co.jp(ご連絡いただく際は[at]を@に変換してください)