Toon Boom日本支社は、Toon Boomのソフトウェアと日本のクリエイターたちの関係にフォーカスしたインタビューシリーズ『Toon Boom Interview Files』の連載をスタートします。第1弾となる今回は、2022年春にTOKYO MX、BS11で放送されたTVアニメ『ヒーラー・ガール』の原案・監督を務めた入江泰浩氏のインタビューをお届けします。 入江氏が、「今作の肝であるミュージカルシーンの実現に大いに役立った」と語るように、彼の制作に欠かせないツールだった絵コンテソフトStoryboard Pro。本記事では『ヒーラー・ガール』の事例からStoryboard Proの可能性についてお聞きしました。 続きを読む »
「モーションブラー」とは?あえてブレを加え、よりナチュラルを追求する!
モーションブラーというのは、「モーション」と「ブラー」のふたつの単語が合体した専門用語です。モーションというのは日本語で「動き」を示し、ブラーというのは日本語で「ぼけ・ぼかし」の意味を持つので、これが合わさったモーションブラーは「動きあるものを撮影した時に生じるぼけやぶれ」のことを意味します。
さて、ではなぜモーションブラーがアニメーションやCGに必要なのでしょうか?
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モーションブラーとは?
改めて、モーションブラーとは「動きあるものを撮影した時に生じる”ボケ”や”ブレ"」のことです。
写真を撮影するときに目の前の撮影対象が動いていると、出来上がった写真はブレてしまいます。たとえシャッタースピードを超高速に設定したとしても、完全に静止していない以上、目には見えなくてもほんのわずかな残像は残ります。
実写映像というのは、写真を連続で撮影したものをパラパラ漫画のようにしたものですから、被写体が動いていればどうしたって、写真のようにブレが生じるのです。
これが、モーションブラーが生じる原因です。
そして面白いことに、人間の目も似たような構造で動きを認知しているのだそうです。だから私たちの脳は、感覚的に映像とはそういうもの(ブレるもの)だと思っています。
モーションブラーのない世界
モーションブラーがない世界(つまり、動いているものが少しもブレない世界)というものがあります。それがアニメやCGの世界です。
アニメやCGは現実ではありません。従って、やろうと思えば完全にブレのないコマを連続して撮影し、繋げて映像にすることができます。
被写体がブレたりボケたりしないわけですから、良さそうに聞こえますが、これがよくないんです。なぜなら、人間の脳が既に「映像の動く被写体はブレて当然だ」と思い込んでしまっているからです。だから、そのギャップに違和感を感じてしまいます。
モーションブラー(エフェクト)の登場
そこで、アニメやCGの業界ではモーションブラーというエフェクトをかけるようになりました。動きにあえてブレを加えるエフェクトです。これによって、人間の脳に「自然な動きである」と認知してもらえます。
もちろん、Toon Boomのアニメーション制作ソフト『Harmony』でも、モーションブラーのエフェクトをサポートしています。
「おばけ」と「モーションブラー」の違い
日本のアニメの業界に絞ると、モーションブラーに近い考え方の技術に「おばけ」と呼ばれるものがあります。
このおばけというのは、シンプルにいえば残像のことです。
モーションブラーのやり方は、あくまで動いているものにブレのみを加えます。ゆっくり動けばあまりボケませんし、早く動けばたくさんボケます。たくさんボケたときには、それが残像のように残りますが、それはブレた結果の残像です。
対しておばけというのは、残像そのものを作画してしまう方法です。
例えば、剣士が主人公のアニメがあったとします。剣士が刀を抜き、振り下ろす!すると、刀が振り下ろされる一瞬、その刀の形が変形して細長く伸び、残像のように描かれます。しかし、振り切った刀は元どおりです。
これがおばけで表現するときの残像です。結果的に残像が残るというよりは、残像が残ることを予想して先に絵で表現してしまいます。
今回の振り返り
人間の目で見て違和感がないように、わざと映像をブレさせるなんて、面白い発想だよね!でも、ソフトウェア上でモーションブラー効果を加えるという発想以前に「おばけ」という形でその違和感をなくそうとしたアニメ業界も、すごい!
色んなアプローチで、クリエイターがリアルを目指した結果だよね。「どうしたら違和感がなくなるのだろう?」と考えて答えにたどり着いた先人の発想力は、本当に脱帽さ。
うん。技術が積み重なって今がある。そして、今のクリエイターもまた新しい表現を生み出している。素敵!
ともちゃんの時代には、どんなアニメの表現が生まれて来るのかな?