Toon Boom日本支社は、Toon Boomのソフトウェアと日本のクリエイターたちの関係にフォーカスしたインタビューシリーズ『Toon Boom Interview Files』の連載をスタートします。第1弾となる今回は、2022年春にTOKYO MX、BS11で放送されたTVアニメ『ヒーラー・ガール』の原案・監督を務めた入江泰浩氏のインタビューをお届けします。 入江氏が、「今作の肝であるミュージカルシーンの実現に大いに役立った」と語るように、彼の制作に欠かせないツールだった絵コンテソフトStoryboard Pro。本記事では『ヒーラー・ガール』の事例からStoryboard Proの可能性についてお聞きしました。 続きを読む »
「名探偵コナンセミナー」新オープニング 斬新な映像を支えたToon Boomの役割【ACTF2020レポート】
2月9日に東京・練馬区立石神井公園区民交流センターで「ACTF(アニメーション・クリエイティブ・テクノロジー・フォーラム)2020」が開催された。(一社)アニメーター・演出協会が主催するアニメーションのクリエイティブとテクノロジーのイベントである。当日は制作ツールや技術の最新情報を求める多くのアニメ関係者で会場は大賑わいになった。
なかでも関心を集めたトークセッションがトムス・エンタテインメントによる「名探偵コナン新OPの制作でTMSが経験した、CGとToon Boomのフルデジタルアニメ制作」だ。
今年1月から放映開始した『名探偵コナン』テレビアニメシリーズの新オープニング(OP)に盛り込まれた数々の最新技術と制作工程を明かした。
名探偵コナンのダンスOPは、どう作られたのか?
発表当初、主人公・江戸川コナンが立体化し、切れのあるダンスまで踊ってしまう映像と抜群の演出が大きな話題となった。同時に「一体どうやって映像を完成したのか?」、気になっていた人も多かったはずだ。実はこの制作にToon Boomの技術が大きな役割を果たしている。
登壇者はトムス・エンタテインメント(TMS)の安榮卓也プロデューサー、制作チームを率いたディレクターの瀬下寛之氏(映画監督)、アートディレクターの片塰満則氏(ディレクター・オブ・フォトグラフィー)。それにToon Boomマーケティングマネージャーの遠山怜欧氏である。
まず気になるのは、今回のOPにCGを導入した理由である。安榮プロデューサーはTMSがこれまで他社に較べてアニメ制作でCGの導入が遅れていたと指摘する。そのうえで今回は、単なるデジタルでない新しいものを目指した。
演出振付家のゲッツ氏によるモーションキャプチャの様子
ここからキャラクターをCGモデルから作り上げ、モーションキャプチャを使って踊りだす斬新なアイディア生まれた。さらにそれをセルスタイルで表現した。『シドニアの騎士』や『BLAME!』の瀬下寛之氏、『ハウルの動く城』のCGで活躍した片塰満則氏といった実力派の起用からも、新しいものに対する強い意欲が窺われる。
しかし、もともとは2次元の漫画が原作、さらにアニメでは手描き2Dセルスタイルで人気を博した『名探偵コナン』のCG化にハードルは感じなったのだろうか。
実は瀬下氏も「最初はコナンのようなカリカチュアなキャラクターはCGに向いていないと判断していた」と話す。ところが実際にやってみるとコナンは3Dにぴったりだったという。フィギュアに向いたキャラクターはCGにもし易いということを発見した。
ダンスのアイディアはCG表現がダンスに向いているとの判断と、自身ダンスが好きなことから今回はパラパラをリスペクトしたためだ。近年はロトスコープからのアニメのダンスシーンを制作することも多いが、今回はモーションキャプチャを使っている。瀬下氏はモーションキャプチャであればよりメリハリのあるダンスが出来ると話す。
また制作にあたっては、アセットを展開させたいと考えた。さらに3DCGと手描きの情報を同じレールに乗せるためベクターで素材を揃えることにした。それに適した制作ソフトとしてHarmonyを採用した。
片塰氏はコナンの造形に、これまでの手描きキャラクターの経験が多く取り込んだ。歴代作画監督の修正集をかなり参考に、立体で手描きの勢いや線の抑揚を実現した。
新しい制作フローにおいてToon Boomが果たす役割
また3DCGにHarmonyを乗せることで、映像をより親しみやすいかたちに仕上げている。Toon Boomの大きな役割を最後の仕上げと表現する。例えばハイライトを変えることで、キャラクターの表現が増すわけだ。それが視聴者に親しみやすいコナンを創り出す。
また今後の制作について、3Dの作画にToon Boomをもっと乗せることが可能でないかとする。例えばコナンのキャラクターを作る際に、顔をToon Boomのカットアウトで作り、それをつけ替えていく。これで顔の輪郭や髪型などを保ち、キャラ崩れが起きにくくなる。
©青山剛昌/小学館・読売テレビ・TMS 1996
さらにToon Boomを使う際に従来の作画のフローを置き換える考えでなく、CGのためのワークフローに並べ替えられるのでないかという。
これは瀬下氏も同様に、新しいワークフローの可能性を考えている。Toon Boomの利点が選択肢を考えながら出来ることだと説明。データが途中から分岐できるので、いろいろな可能性を検討しながら制作を進めることが可能なのだ。今後はキャラ表からToon Boomで始めて、ルックの解釈をToon Boomと3DCGでやるというこれまでと違う流れもあるでないかと話す。
安榮プロデューサーは、Storyboard ProとHarmonyの連携のうまく出来ることに注目しているという。やはり3Dベースからアプローチすることで、総デジタル化が目指せるのでないかという。
そうなれば次の作品展開も気になるところだ。安榮プロデューサーによれば、実はCG・デジタルを活用したTMSのプロジェクトは現在詳細を明かせないが他にも動いている。今回の『名探偵コナン』新オープニングはその第一弾なのだという。今後もまだまだ驚くようなアニメーションが飛び出すことが期待出来そうだ。そのなかでToon Boomのツールも積極的に活用されることになりそうだ。
Toon Boomからのお知らせ
劇場版『名探偵コナン 緋色の弾丸』(4月17日公開)の最新予告映像が、公式YouTubeチャンネルにて公開されましたので、ご紹介します。
また、本記事の公開にあたり、トムス・エンタテインメント(TMS)にご協力いただきました。ありがとうございました。