Toon Boom日本支社は、Toon Boomのソフトウェアと日本のクリエイターたちの関係にフォーカスしたインタビューシリーズ『Toon Boom Interview Files』の連載をスタートします。第1弾となる今回は、2022年春にTOKYO MX、BS11で放送されたTVアニメ『ヒーラー・ガール』の原案・監督を務めた入江泰浩氏のインタビューをお届けします。 入江氏が、「今作の肝であるミュージカルシーンの実現に大いに役立った」と語るように、彼の制作に欠かせないツールだった絵コンテソフトStoryboard Pro。本記事では『ヒーラー・ガール』の事例からStoryboard Proの可能性についてお聞きしました。 続きを読む »
アニメ制作業界に展示会が少ない3つの理由。
アニメ制作業界の展示会は、いくつか参加してきました。どれも学ぶことが多くて、参加して良かったと思うようなものばかりでしたが、全体的に見るとこの業界には展示会や勉強会のようなものが少なめだなと感じます。
個人的に展示会や勉強会、交流会に参加して学んできたことが多かったので、アニメ制作の業界にももっと増えればいいなと思いつつ、そこには少ない理由があるとも思いましたので、文章にしてみました。
アニメ制作業界の展示会に参加して、たくさんのことを学んだ
2019年、2020年と私はいくつかのアニメ業界向けイベントに参加しました。
2月に開催される『ACTF(アニメーション・クリエイティブ・テクノロジー・フォーラム)』や、3月に開催される『TAAF(東京アニメアワードフェスティバル)』、そして学生向けの『ICAF(Inter Collage Animation Festival)』や秋の『あにつく』、さらに去年初めて開催された『IMART(国際マンガ・アニメ祭 Reiwa Toshima)』などです。
今年初めて『Anime Japan』に参加する予定でしたが、あいにく新型コロナウイルスのせいで流れてしまいました。もちろん、業界向けではありませんが『コミケ』や、徳島で開催される『マチ★アソビ』にも参加しました。
アニメーションのデジタル化を見据えて開催されているACTFや、アニメーターをメインターゲットに開催されるあにつく、アニメビジネス寄りの事例が多いIMARTの各種セッションからは、非常に多くのことを学びました。
ただ全体的に、アニメ業界には業界人が横で繋がりあって新しい知識や技術を共有するオフィシャルな場所が少ないように思います。
展示会で発表する機会が多いウェブ業界
私は、長くウェブマーケティング業界で働いていました。
ウェブ業界では、業界向けの展示会が頻繁に開催されます。大きな展示会だけでなく、中小の様々なイベントが全国各地で毎日のように行われ、その場で別の会社の人と交流したり、営業が発生したり、モチベーションが高まったり、今後のトレンドが話し合われたりします。
日本国内だけでなく海外の展示会にも参加しました。『Pubcon』というラスベガスで開催されるマーケティングのイベントでは、4日間かけて8つの大きなテーマに分かれて1日中プレゼンテーションが開催されます。ブースも大盛況で、みんなが情報交換をします。
こんな大規模なイベントが何個も何個もあって、それはそれでやりすぎだし、当時は「成果をアピールしたいだけの人や人が多い」なんて思ったこともありました。
一方、自分の研究成果をプレゼンする機会があるというのは、業界全体にとって重要なことだとも感じていました。特に、当時の私のような業界経験の浅い人間には、こういった発表会から刺激を受けたことがたくさんありました。
発表の機会は、アニメ業界に貢献するか?
アニメ業界で開催される展示会は、Anime Japanのように作品の売買に関わる物が多いように思います。逆に、制作者が技術を共有するような場所や、ビジネスサイドの勉強会は、あまり多くありません。
アニメ業界に展示会があまり根付かないことには理由があるでしょう。
理由その1:著作権の扱いが難しい
アニメ業界は、著作権の扱いがセンシティブです。
今のアニメはほとんど製作委員会方式で作られているため、事例を発表するにも委員会の許諾を得なければいけません。製作委員会と交渉できないスタジオだと、制作の裏側を発表することは容易ではないでしょう。
そこまでしてノウハウを公開するということに、スタジオ各社があまりメリットを感じられないのかもしれません。
理由その2:メリットが少ない
そもそも、スタジオやアニメーターにとって、シェアすることによるメリットがあまりないと考えているのかもしれません。
人気スタジオであれば、2年3年先まで制作の予定が埋まっていると言われるほどです。アニメーターも腕利きの方は取り合いです。わざわざ時間を割いて業界にアピールして、新規の営業する必要性を感じていないのかもしれません。
理由その3:余裕がない
例え業界の将来を案じたとしても、それ以上に目先の自社のビジネスの方が大変で、ノウハウを共有している暇がないという理由も大きいでしょう。
確かに、事例を発表するためには周到な準備が必要です。実験して、権利交渉して、伝わりやすくプレゼンを作って当日を迎えるというのは、全く簡単ではありません。
では、知識共有の場所は少ないままでいいのでしょうか?
少なくとも、自分の新人時代を思い返すと、こういったイベントに参加しながら業界に交友を広げたり、最新の技術を学んだりして今があるので、現状はもったいなく感じます。
コロナウイルスでリアルイベントが開催できない、というような意味ではなく、スキル伝承の機会や仕組みを発明しないと、近い将来伝統産業化してしまうこともあり得るでしょう。
ちなみにToon Boomは、依頼していただけば海外のフルデジタルアニメーション事例を共有しに参りますのでお気軽にお声がけくださいませ!
leo[at]toonboom.co.jp(メール送付時は、[at]を@に変換してください)