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イギリスのYouTuberが作ったHarmonyのカットアウトのチュートリアル動画が、凄い。

Harmonyにはマスターコントローラーという機能があります。これは、主にカットアウトアニメーションで使用されるもので、日本ではまだあまり馴染みがありませんが、この機能を使えるとこんなことができるようになる!という意味では、知っておいて損はないでしょう。

今回は、イギリスのブリストル在住のベテランアニメーター、オリ・プットランド氏に本社が行ったインタビューを翻訳しました。彼は映画やテレビなど、幅広い分野で20年以上の経験を持つ方で、YouTubeチャンネルも運営しています。

彼は以前、このチャンネルで、アニメシリーズ『STARBARIANS(ハリー・パートリッジ氏が手掛けるWeb作品)』のKillgarというキャラクターを使い、Harmoneyを使ったカットアウトのリギング制作方法を紹介しました。

今回は、そのプットランド氏にお話です。

ー ストップモーションのアニメを制作した経験をお持ちですが、それが2Dアニメーション制作で役立っていたりしますか。

ストップモーションの経験が、2Dアニメーションを学ぶにあたって必ず必要というわけではもちろんありませんが、間違いなく、その経験が最初にあったからこそ、重さや力学的な感覚がより身についたと思います。

ストップモーションの仕事の面白いところは、実際の現実空間にキャラクターが存在していることです。実際に重さもあるし、触って動かすことができる。表現するのがすごく難しいのですが、そうした物質ならではの触った感覚があるので、自分の触感と、それに対するキャラクターの動きの感覚を身につけられます。

ー ご自身のYoutubeチャンネルでKillgarのキャラクターを使ったリグ方法を解説していますが、そもそも、なぜこのキャラクターを使う事になったのですか。

数ヶ月くらい前に、ハリーがこのキャラクターでリグが作れるかどうか聞いてきたんです。なので、私のYotubeチャンネルのチュートリアルのコーナーで試しにやってみる事にしました。ハリーとは以前にも一緒に仕事をしたことがあったし、彼のキャラクターを扱うことには慣れていましたしね。彼は仕事に求めるものは高いですが、すごくリラックスした性格の人なので、彼のキャラクターを私のYoutubeで使う時に細かい事をうるさく言ったりはしません。

このキャラクターを使ったもうひとつの理由は、Killgarのデザインが複雑かつ、構造がいくぶん写実的だった事もあります。また『STARBARIANS』は根強いファンの多いシリーズなので、新しい技術をこのキャラクターで試すのは、観る側の多くの反応を見てみるにはいい素材だと思ったんです。

また、ハリーのアニメーションは、時間がかかる昔ながらの手描きで作られます。そのハリーのスタイルを維持したまま、効率的な方法で再現するというのも、重要な試みだったんです。

アートというものを数値化してみるみたいに聞こえるでしょうが、それでも、私達アニメーションを作る誰もが分かっているように、よっぽどの予算や大規模なチームがない限り、制作において時間の効率化は本当に重要なことなのです。

Killgar Head

ー 実際に制作してみて、Harmonyでのリギングはいかがでしたか。

Sun&Moon Animation Studiosというスタジオに在籍していた時に、Harmonyのマスターコントローラーの機能を初めて使いました。当時、BBCのTVアニメ版『ドクター・フー』のあるエピソードの制作で、短時間でたくさんの人間のキャラクターを制作しなくてはならないプロジェクトを抱えていたんです。その際にマスター・コントローラーを使いました。おかげで、あの短い期間にしては、『ドクター・フー』TVアニメシリーズの中でも、最高傑作のエピソードを作り上げられたと思います。

私たちは当時、Harmony 15を使っていましたが、マスターコントローラーはその時の新しい機能で、それまでにない技術を試しながら使いこなしました。その当時と同じように、Killgarのキャラクターのリギングは、Harmony 17の新しい機能を試してみるのに良い機会でした。今回のHarmony 17では、リグの設計がかなり簡単になっていて、プログラム自身が大きく進化していると思います。また、CPU負荷が軽減されているので、複雑なキャラクターのリグ作りもやりやすくなりました。

ー リグでデザインをするにあたり、何が最も難しいことでしょうか。

人体の頭部のデザインをする際、ややこしい部分がだいたい目と口です。大きく頭を動かす際に、一番大きく形が変わるパーツですから。今回は時間もなかったので、複雑な動きになる口の部分はあまり動かしていません。

Killgarの目のデザインは彼の表情によって様々に変わりますが、今回のチュートリアルの動画では、シンプルにするために、あえて単純な丸い目のデザインを使っています。スタックウィザードとフリーフォームデフォメーションというHarmony 17の新しい機能は、かなり複雑なものでも、より簡単に、そしてより幅広い機能で制作できるようになっています。なのでハリーがもっと違う形のデザインのKillgarのリグが欲しいって言ってきても、すぐにデザインできると思いますよ。

ー マスターコントローラー機能を使ってのKillgarのキャラクターのリギングについて、ハリー・パートリッジ氏や周辺の人々からの評価はいかがでしたでしょうか。

ハリーは相当驚いていましたね。彼は『ラプンツェル』や『ライオン・ガード』のディズニーのテレビシリーズを見て、こうした新しい技術の事はよく知っています。でも、おそらくなのですが、ディズニーは社内にプログラマーの集団がいて、独自にプログラムを組んで制作しているんじゃないかなと思うんです。それとは違い、マスターコントローラーやスタックウィザードなど、Harmonyの新しい機能を使うことによって、個人のクリエイター達がこの新しいアニメーション手法を試すことができるようになりました。すごくワクワクする事です。

そうして作られたものが、手描きじゃないことに皆がびっくりしていますし、この技術を使って、より洗練された作品を今後どう作り出していくか、皆が考えたがっていると思います。

ー Youtubeでは、このリグの過程を12分の長さのチュートリアルに凝縮して紹介していましたが、なぜこういった形のチュートリアルを作ったのでしょうか。

このチュートリアルのコーナーは、機能や使い方の紹介というより、クリエイターが新しい機能を試してみるきっかけづくりのために作っています。これまで私自身がオンラインで観てきたチュートリアルって、どこか味気なくて退屈だったんです。複雑なものになると、特につまらなくなりますよね。なので、私のチュートリアルのコーナーでは、過程を単純に紹介するんじゃなくて、「やってみた!」という形にしました。

今回のチュートリアルのビデオは、リグ制作に全く興味がない人でも楽しんでくれていたみたいです。自分としては、チュートリアルというより、どちらかというと料理作りの動画みたいな感じで作ったので、料理をしない人でも、料理動画を楽しむような感じで、観てくれたんじゃないかと思います。

ー ツイッターで、マスターコントローラーの機能は、アニメーション制作に取って代わるものではなく、制作を助けるものだと思うと述べられていましたね。新しい2D技術を今後使っていくアニメーター達に、何かアドバイスはありますか。

こうした技術を難しく考えずに、アニメーターの必要に合わせて使うことです。

リグで全ての事ができるのは魅力的なことですが、リグで何でも作ろうとすればするほど、アニメーターの制作の妨げになる可能性も出てきます。オートメーション化しすぎて、部分的に手作業で制作した場合よりも、制作速度が遅くなる危険性もあります。マスターコントローラーができる事も、時間がありさえすれば、手作業でもできます。

ややこしい作業をしてくれますが、魔法の技術ではありません。あくまでいい仕事をすれば、魔法のようなツールとして役立ってくれると思いますよ。

オリ・プットランド氏についてより詳しく知りたい方は、ぜひツイッターYoutubeをチェックしてみてくださいね。