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今、世界的企業がアニメで広告を制作する理由

Tags: 海外アニメ事情 事例 ブランディング

日本動画協会(AJA)が2018年に発表した統計データによると、アニメ産業の市場規模は、2017年に2兆1527億円を超えたそうです。中でも海外向けの市場が成長していて、こちらは9948億円の産業になりました。

海外向けの市場規模が拡大した要因のひとつとして、NetflixやAmazon、Huluといった動画配信プラットフォームの存在を挙げることができます。いずれのプラットフォームも、大規模な予算を用意して優秀なスタジオとともに競ってオリジナル作品を制作しています。

しかし実は、アニメに注目しているのは、オンライン配信プラットフォームだけではありません。自社のCMやブランディングにアニメ的な表現を取り入れたいと考える一般企業も、世界中で増えているようです。

今回は、その一例をご紹介したいと思います。

D’art Shtajioが、アディダスのCMを制作

東京のアニメーションスタジオD’ART Shtajioは、アディダスのアニメーション広告を制作し、発表しました。

上に掲載した動画は、D’ART Shtajio社が直近で制作したアニメコマーシャルを3つ、まとめたものです。アディダスの広告の他に、スニーカーのオンラインショップSnipesと、アパレルのオンラインショップASOSの広告もあります。このうちアディダスとSnipesに関しては、100%Toon BoomのHarmonyを使って制作されています。

アニメの手法を用いた広告動画の制作には、様々なメリットがあります。例えば、あえてリアルな描写から離れることで、消費者に親しみやすさを与えたり、あるいはターゲットによってはそもそも俳優のリアルな演技よりもアニメの方が受け入れられるという場合もあるでしょう。

そんな中、D’ART Shtajio社のCMO、デービッド・ピンター(David Pinter)氏は次のように話してくれました。

アニメーションであれば、デザインにしても洋服にしても、広告主の思うがままにキャラクターデザインが可能です。これが、アニメーションで制作することで得られる、非常に大きなメリットです。どんな場所にも、どんな時代にも行くことができるんです。

確かにD’ART Shtajioの作品には、実写ではなかなか難しそうなかっこいいアクションシーンが多く登場します。

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画像:D’ART Shtajio

D’ART Shtajioは、欧米のクライアントに品質の高いアニメーションを提供することを、ひとつの目標としているそうです。この動画で紹介されているプロジェクトは、まさにその目標を体現したものだと言えるでしょうし、欧米の企業がブランディングにアニメーションを活用し始めている現在の状況は、彼らにとって追い風となりそうです。

Storyboard ProやHarmonyを使ったデジタルアニメーション

なお、D’ART ShtajioはStoryboardProやHarmonyを使ったフルデジタルアニメーション環境を実現しています。このことについて、CEOのアーセル・アイソム(Arthell Isom)氏にお話を伺いました。

Toon Boomのソフトを利用してアニメーションを制作することは、コストダウンに繋がっています。Harmonyを使えば、例えば色塗りやクリーンアップまで一人で完結することができるんです。より少人数で、シンプルに作品制作できています。

機能で言えば、特にオニオンスキンは重宝しています。また、下書きのうちからプレイボタンを押すだけでアニメーションが動き出すというのも、非常に便利です。

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画像:D’ART Shtajio

まとめ

今回ご紹介したのは海外の事例でしたが、もちろん日本でもアニメーションが企業のブランディングに活用される事例は増えています。これはここまでお読みいただいた皆様には周知の事実かと思います。

例えばスタジオコロリドがYKKと制作した『FASTENING DAYS』シリーズや、マルコメと制作したアニメCMシリーズは、公開されるたびに話題になりました。あるいは、カップヌードルのアニメCM『HUNGRY DAYS』も、「アオハルかよ。」というフレーズとともに大流行しました。

アニメスタジオにおけるビジネスの収益化は、まだまだ模索段階で、各社手を尽くしている状態です。一方で、市場規模は拡大を続けていて、需要はいたるところに芽生えています。

弊社Toon Boomは、HaromyやStoryboard Proといったアニメ制作ソフトによる制作効率化の支援をはじめ、より長く日本の素晴らしいアニメカルチャーが繁栄するよう、できる限りの努力を尽くしたいと思っています。