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今、中国のアニメーション産業に注目が集まる理由。

中国は、エンタテインメント産業のフロンティア、あるいは中心地としてのポジショニングを確立しつつあります。世界最大の人口を誇るこの国は、 2020年には興行収入の面で米国を追い抜き、世界最大となる122億8000万ドルに達すると推定されています。また同国は、視聴者としてだけでなく、アニメーションの制作地としても欧米のアニメーションスタジオの注目を集めつつ、一方で国内製のオリジナル作品のヒットも増えています。

Global and China Animation Industry Report, 2019-2025(世界と中国のアニメーション産業レポート 2019-2025)』によれば、中国のアニメーション産業は2019年には2,000億人民元(約290億ドル)に、2025年までには3,750億人民元(約543億ドル)に達すると予測されています。iQiyi、Youku、Tencentなどのプラットフォームで合計8億人以上のインターネットユーザーと3億人のオンラインビデオ購読者を抱えるこの市場では、オリジナルのアニメーションコンテンツへの需要が高まっており、その結果市場全体が拡大しています。さらに、5Gやモバイル、VR技術の進歩にともなって、今後も成長し続けるものと見られます。

では、中国がアニメーションの世界市場で今になってやっと地位を確立しはじめているのは、一体なぜでしょうか?

中国のアニメーションの歴史

その答えを得るには、20世紀初頭に戻る必要があります。中国における最初のアニメーション映画は1918年に上映されました。その後10年間に、万氏兄弟(Wan Brothers)として知られる4人組のプロデューサーが技術的な先駆者となり、Great Wall Film Companyを立ち上げました。 

 

万氏兄弟は中国初の音声付きアニメ映画 『The Camel’s Dance』を作成し、その後第二次世界大戦まで、より長い作品の制作を目指し、革新を続けました。この頃には東西の文化交流があり、 『白雪姫』 などの世界的な映画が上海で上映され、地元のクリエイターたちに影響を与えました。

中国のアニメーションは戦後の復興期に開花し、万氏兄弟は 『Why is the Crow Black-Coated』 (彼らにとって最初の長編カラーアニメーション)や 『Havoc in Heaven』(中国の古典 『西遊記』に触発された音楽作品の傑作)という作品を作成しました。しかし、1960年代後半から1970年代終わりまでの文化大革命が、中国のアニメーション業界を実質的に一時停止させてしまいます。

2020年代に向け、変化する中国のアニメーション産業

中国のアニメーション業界は、2000年ごろにはあまり重要視されていませんでしたが、その後20年間で高品質なコンテンツを作成する国として、あるいは高品質なコンテンツを消費する国としてその地位を確立してきました。そのことは、2016年の『紅き大魚の伝説(Big Fish & Begonia)』のような映画の製作に表れています。この映画はスタジオジブリのアニメとも比較され、欧米諸国でも配信されました。またこの作品はかつて最も成功した中国のクラウドファンディングプロジェクトとなり(投資額は約2800万円)、中国での興行収入は約85億円(5億6500万元)に達しました。

『紅き大魚の伝説』を手がけたEnlight Media社は、業界のグローバル勢力になることに注力しており、Coloroom Picturesという新しい子会社を通じて22のアニメーション映画を制作する予定です。そして、Enlight Mediaに競合する企業もあります。中国企業CMC Capital Partnersは昨年、DreamWorks Orientalを買収し、100%中国所有のPearl Studioへと変身させました。かつて中国国内のプロダクションは、国内外であまり成功してきませんでしたが、それは急速に変化しつつあります。 

「現在、コンテンツを国内外向けに制作したい中国国内スタジオには大きなチャンスがあります」と、中国のアニメーションスタジオFeitong CartoonのプロデューサーであるVivan Han氏は言います。 

2019年7月、Enlightの最新CGアニメーション映画 『Nezha』 は、中国のアニメーション映画史上で最高の公開週末を迎え、その興行収入は9,150万ドルを達成しました。それは世界の興行収入では、ディズニーの 『The Lion King』(ライオン・キング)実写版に続く第2位でした。同様に、3D映画の 『西遊記 ヒーロー・イズ・バック(Monkey King: Hero is Back)』 と 『白蛇伝(White Snake)』は中国の劇場版アニメとして大きな経済的成功を収めました。特に後者は、GKIDSによって北米での配給権が購入されたはじめての中国作品となりました。

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Source: GKIDS

さらに、国際的なコラボレーション作品の制作も進行中です。 『The Monkey Prince』(北京のBona Film Groupと日本の東映アニメーションとの合作)や、ソニーピクチャーズアニメーションと中国のBase Animation、ジャッキーチェンのSparkle Roll Mediaとのパートナーシップによって作成された『Wish Dragon』(ウィッシュドラゴン)などが、その例です。

さて、ポジティブな話はひとまず以上として、中国のアニメーション業界にとっての課題にも目を向けてみましょう。

共同制作作品とオリジナル作品のほかに、中国は受託スタジオビジネスのハブとしての地位確立にも継続的に取り組んでいます。2017年、米国のテレビアニメーションの約90%がアジアで制作されましたが、中国の業界はこの市場の主要プレーヤーではありませんでした。その理由は、文化的なものから政府によるものまで多様です。 

「中国のアニメーション市場は、文化だけでなく、戦略と政府の政策においても他の国とはまったく異なります。内的要因が非常に多いので、なぜそうなのかを説明するのは簡単ではありません。」とHan氏は言います。

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Source: Sardine Productions

合計約100人のアーティストを抱える彼女のスタジオは、Gaumont Animationの 
Pok & Mok』や、Sardine Productionsの『Chop Chop Ninja』 、DHX Mediaの『My Little Pony』、さらにはフランスのCyber Group Studiosと製作中のシリーズなど、欧米の多くのプロデューサーに制作機能を提供してきました。彼女のチームは3Dと2D両方のアニメーションを扱っており、最近使用ソフトをFlashからToon Boom Harmonyに完全に切り替えました。

「3年前、私たちはこの業界が変化していることに気づきました。より多くのヨーロッパのスタジオから、FlashではなくToon Boom Harmonyを使用して作成されたプロジェクトが求められるようになりました」とVivianは言います。 

続けて、「世界は変化しています。NetflixやDisney +のようなストリーマーによって配信は変化しており、これまで以上にコンテンツに対する需要が高まっています。欧米のスタジオは仕事の需要に追いつけず、私たちが海外のスタジオのために作業する機会も増えています。」

中国のアニメーション業界にとっての希望と課題

Animated-China.orgのMars Dai氏によると、中国の一人当たりGDPは現在10,000ドルを超えており、1億5000万以上の人口が20,000ドルを超えています。さらに、0〜14歳の人口は2億3,000万人を超えており、アニメーターにとって大きなチャンスとなっています。

反対に、中国の消費者と当局は、アニメーションを若者のためのものだと見なす傾向があり、このことがこの市場にとっての障壁となっています。例えば、2017年のアヌシー国際アニメーション映画祭で中国が開催国になった際には、政府はイベント主催者に圧力をかけ、絶賛された成人向け暴力映画 『Have a Nice Day(大世界)』には中国の現代生活に対する批判が含まれているとして警告し、この作品の出品が取り下げられました。


この国のアニメーション業界が直面している別の課題には、専門教育やトレーニングに関連するものがあります。多くの場合、クリエイターの教育はスタジオの責任とされているため、結果として制作物のクオリティが低下したり、コストが増大している可能性があります。

「中国におけるアニメーション教育は改善されてはきましたが、キャラクターエフェクトやその他の技術的なスキルに関する教育は大学では行っていないため、企業内での実務を通してしか学べません。」と、 Varietyに引用されているとおり、Lightchaser Animation Studios(『White Snake 』の制作者)の共同設立者 Yuan Ye氏は言っています。

彼は続けて、「私たちはこの会社を大学の延長のようなものにしました。映画作品を継続して制作したいアニメーション会社にとって、この種の人材プールを社内に抱えることは必要不可欠です。」と言います。

また、業界をサポートするための組織も登場しています。Daiのプラットフォーム、 Animated-China.orgは、「中国の数百のアニメーション関連企業および個人の情報を収集し、照合しています。私たちは、ウェブサイトや出版物を通じて、また主要なアニメーションフェスティバルや展示会で、中国企業に関心がある世界中の人々にこの情報を発信することによって、創造性や、制作力、資金調達、流通、マーチャンダイジングなどの面における協力を推進していきます。」 

彼は続けて、「一方で”橋渡し役”やプラットフォームとして、中国のアニメーション産業が世界をよりよく理解できるように、世界のアニメーション産業の情報を中国側に紹介することも行っています。」と言います。

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Source: Corus Entertainment 

国外からの大きな関心と投資を呼んでいる中国アニメーションの大きな可能性を認識しているのは、彼ばかりではありません。カナダのCorus Entertainmentや、Nelvana、そしてToon Boom Animation(共同タレントイニシアチブであるChina Tales Incubatorで地元のアニメディストリビューターおよびブランドマネージャーのWeKidsと提携した)なども、中国でのアニメーションビジネスに注目しています。 

中国内で6つのワークショップを開催するChina Tales Incubatorは、中国に拠点を置くクリエイターたちに、子供向けアニメコンテンツのコンセプト案を募集しました。このコンペの優勝作品には、北京ののBingo Animation Studioによる『Dreamweavers』が選ばれ、現在は制作フェーズに入っています。 

Dreamweavers のような新しいスタジオは将来を楽観的に見ていますが、中国がアウトプットでアメリカや日本に真に匹敵するようになるまでには、もうしばらく時間がかかるでしょう。

とは言え、20世紀後半の中国の急速な発展を参考にするとすれば、「メイド・イン・チャイナ」のクオリティーが業界標準に追い付くまで、そう長くはかからないかもしれません。 

※本記事は、Toon Boom Animation Blogの『MADE IN CHINA: WHY EVERYBODY IS WATCHING THIS ASIAN ANIMATION INDUSTRY』の翻訳です。

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