Toon Boom日本支社は、Toon Boomのソフトウェアと日本のクリエイターたちの関係にフォーカスしたインタビューシリーズ『Toon Boom Interview Files』の連載をスタートします。第1弾となる今回は、2022年春にTOKYO MX、BS11で放送されたTVアニメ『ヒーラー・ガール』の原案・監督を務めた入江泰浩氏のインタビューをお届けします。 入江氏が、「今作の肝であるミュージカルシーンの実現に大いに役立った」と語るように、彼の制作に欠かせないツールだった絵コンテソフトStoryboard Pro。本記事では『ヒーラー・ガール』の事例からStoryboard Proの可能性についてお聞きしました。 続きを読む »
瀬下寛之監督と伊藤智彦監督の登壇イベントでStoryboard Proに注目が集まった日【IMART 2019遅レポ】
だいぶ遅くなってしまったんですけど、「誰かが書いてくれる」と思ったら誰もレポートしていなかったようなので、自分がやります!
11月15日から17日にかけて、池袋の豊島区役所でIMARTというイベントが開催されました。IMARTには『国際マンガ・アニメ祭 Reiwa Toshima』という正式名称があります。てんこ盛り感があって面白いイベント名ですね!
マンガやアニメに関する様々なセミナーやディスカッションが開催されたこのイベントでしたが、私は17日に開催された『コンテンツ制作を取り巻くデジタル技術のこれまでとこれから…』というディスカッションに参加してきました。登壇者は、記事タイトルにもあるように瀬下寛之監督と伊藤智彦監督、そしてワコムのデザイン教育担当エヴァンジェリストの轟木氏でした。
このイベントのセミナーの特徴は、まず1枠2時間で長いこと。しっかりお話を聞くことができました。そして、アニメファンだけではなく、アニメ業界の関係者の方々が数多く聴講しに来場していたということです(あくまで一般参加者として私が拝見していた感覚であって、主催者側のデータ等を参照したものではありません)
私が参加したこのセミナーにも濃いファンの方と業界の方がどちらもいらしていたようで、会場にはざっと80名ほどが詰めかけ、用意された座席はほぼ満席でした。
セミナーの内容
私が参加したディスカッションの内容は、次のようなものでした(私の主観による大雑把なトピック分けです)
①轟木氏から、業界トレンドのおさらい
まずは、轟木氏から業界トレンドのおさらいがありました。市場規模やNetflix等の新たなキープレイヤーのお話、そしてアニメ制作の歴史とCG作品の歴史についてお話しされました。
②日本アニメ業界のデジタル化
次に、日本アニメ業界のデジタル化について。アニメ制作の中でも特にプリプロダクションのデジタル化についての話題となりました。絵コンテをデジタル化することの意義、というテーマの中では伊藤監督から「絵コンテ作成を民主化したい」というお話が出ました。
これは以前Toon Boomブログで行なったインタビューで語っていただいた「(絵コンテを)オープン化して意見を取り込むことが、結果としてより良い作品を生み出すことに繋がった」というお話に繋がるものでした。
③伊藤監督によるStoryboard Proの実演
さらにここから、伊藤監督によるStoryboard Proの実演になりました。実際に監督がStoryboard Proを使用して作成したビデオコンテのファイルを、そのままStoryboard Proファイルとして聴講者の前で開き、ソフトのインターフェースの説明から、使用時に意識していることなんかを話してくださいました。
写真撮影は禁止でしたが、このパートで印象に残った言葉を後ほど記載します。
④これからのアニメ制作
最後に、これからのアニメ制作についてのお話がありました。高画質の時代に向けて、アニメは、CGはどう進化していくのか?というお話でした。瀬下監督の「高画質対応は、オリジナルツールを作ってでも進めていきたい」というお言葉に力がこもっていました。
Storyboard Proに関する両名のコメントで印象に残ったもの
さて、そもそもなぜToon Boomのサイトでこのレポートをしているかというと、それは瀬下監督、伊藤監督の両名がToon BoomのStoryboard Proユーザーだからです。瀬下監督はずっと昔から作品のプリプロダクションにStoryboard Proを使われていて、伊藤監督も『HELLO WORLD』でこのソフトを使ってくださいました。
お二人が揃って「プリプロダクションのデジタル化」についてお話しされるとあれば、Storyboard Proについて話さないわけがありません!そう、ディスカッションの半分くらいの時間はStoryboard Proの使い方や使い心地に関して話してくださいました。ありがとうございました。
そこで、ここからはStoryboard Proに関するお二人のコメントで、個人的に「Toon Boomブログ読者にシェアしたい!」と思ったものをご紹介したいと思います。
■正確な尺計算が魅力
伊藤監督が、「絵コンテだと、例えばパン映像などのカメラワークの尺計算が甘くなりがちな場面もあるけど、Storyboard Proがあれば大丈夫」というような趣旨のことをおっしゃっていました。
これは、私もクリエイターさんと話しているとよく耳にします。つまり、Storyboard Proは「ビデオコンテとして書き出すことができる」というアウトプットだけでなく、そもそも「タイムラインで尺(時間軸)を意識しながらコンテを制作できること自体にメリットがある」という考え方です。
例えば、アニメーションディレクターの熊本健士さんに行なったインタビューでも「(Storyboard Proのお気に入りの機能は)タイムラインを使って、シーンやカットを作ることができるところです。手軽にタイムライン上でカットの尺調整ができます。すごく便利な機能だと思います。」とおっしゃっています。
■客観視してブラッシュアップ
同じく伊藤監督がおっしゃっていたのは、Storyboard Proでビデオコンテにすると、作品を早い段階から客観視することができて、何度もプレビューしながら不要な部分をカットできるということでした。
これは以前、スタジオコロリドの石田祐康監督にお話を伺った時におっしゃっていたことと通じます。
石田監督は「(Storyboard Proの良さは)まずは、絵コンテを描くとすぐにそれが映像になっている手軽さです。コンテを1本の映像として見られるので、客観的になれるんですよね。流れを掴むためには、すごい良かったです。」と教えてくれました。
■説得力のあるプレゼン資料
瀬下監督がおっしゃっていて印象的だったのが、以前と比べて多様になったスポンサーに対して企画をプレゼンテーションする時に、ストーリーリールがあると説得力が増すというお話でした。ちなみに「ストーリーリール」とは、「ビデオコンテ」の別の呼び方です。
実は瀬下監督とは、以前にもYouTubeでインタビューをアップした通り、継続的に共同プロジェクトをさせていただいているので、こういったお話を聞いたことがあったのですが、この話を聞いて改めて、おそらく監督だけでなくプロデューサーや製作委員会の方々にとってもビデオコンテは有用な武器となり得るのではないかなと私は思いました。
■他のツールとの連携
最後に瀬下監督の言葉をもう一つ。Storyboard Proを単体のツールとして考えるのではなく、他のツールと連携するものとして考えている、という趣旨のお話をされていました。
ここでは、確かHarmonyの話は出てきませんでしたが、瀬下監督の場合元々がCG屋さんで数多のテクノロジーを使いこなして本格的なフォトリアルおよびノンフォトリアル作品を作られてきているので、「連携」という、あまり他の方と話していて出てこないキーワードが飛び出した気がしました。
画像や音声、映像はもちろん、3DモデルをインポートできるのもStoryboard Proのいいところでして、さらに様々な書き出し方法に対応しています。もちろんまだまだ改善の余地はありますが、きっとそういう連携の部分まで考えると、Storyboard Proをどんどん効率的に使えるんじゃないかと感じました。
まとめ
ということで、今回はこれまでのToon Boomブログ記事に比べると比較的カジュアルな感じで書いてみましたがいかがでしたでしょうか?
今回のお話を伺って、お二人ともすごくStoryboard Proを使い込んでくださっている感じがして、嬉しかったです。
ちょうど今週、Toon Boomから『Storyboard Pro 7』が発表されました。この最新版では、描画機能が劇的進化を果たしたり、これまでたくさん改善要望をいただいていたパネル間の空白設置に対応したりと、決して派手ではないかもしれませんが着実にクリエイターに寄り添った進化を遂げています。
ぜひ、まだ試したことがない方、あるいは古いバージョンを使ってくださっている方は一度、無料体験版をダウンロードして試してみてくださいね!
Storyboard Proとは?
Storyboard Proは、絵コンテやビデオコンテを制作するためのWindows/Mac用ソフトウェアです。日本国内外を問わず、様々なクリエイターさんやスタジオにてご利用いただいています。2019年12月に発売されたばかりのStoryboard Pro 7では、人気の高かったブラシ機能やタイムライン機能にさらに磨きがかかりました。