Toon Boom日本支社は、Toon Boomのソフトウェアと日本のクリエイターたちの関係にフォーカスしたインタビューシリーズ『Toon Boom Interview Files』の連載をスタートします。第1弾となる今回は、2022年春にTOKYO MX、BS11で放送されたTVアニメ『ヒーラー・ガール』の原案・監督を務めた入江泰浩氏のインタビューをお届けします。 入江氏が、「今作の肝であるミュージカルシーンの実現に大いに役立った」と語るように、彼の制作に欠かせないツールだった絵コンテソフトStoryboard Pro。本記事では『ヒーラー・ガール』の事例からStoryboard Proの可能性についてお聞きしました。 続きを読む »
Storyboard Proで、初の長編作品をビデオコンテ化!【石田祐康監督インタビュー】
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2018年の夏、自身初の長編アニメーション作品となった映画『ペンギン・ハイウェイ』を制作した、スタジオコロリド(以下コロリド)の石田祐康監督。石田監督はこの作品の制作に、Toon Boomの絵コンテ・ビデオコンテ制作ソフトStoryboard Proをご活用されました。
そこで今回は、石田監督にインタビューをさせていただきました。どんな場面でStoryboard Proが役立ったか?そして、どのようにビデオコンテを活用されたのか?監督ならではの実感のこもったお話を、余すところなくお伝えします!
Storyboard Proを、石田監督が導入した経緯
ー 石田監督は、どの作品にStoryboard Proを使われていますか?
まさに『ペンギン・ハイウェイ』では絵コンテでフル動員しました。
それ以前は紙に描いたり、他のソフトを使ったりもしていたのですが、それに限界を感じていました。それで当時、確か2014年か2015年ぐらいだったと思いますが、Storyboard Proの話を聞きまして、2015年の最後の方には「『ペンギン・ハイウェイ』はこれで行こう」と決めたんです。
ー どんなところが限界だったんですか?
例えば、自分の最初の商業作品となった2013年の『陽なたのアオシグレ』では、ミュージックビデオ的な要素があって、これが明確に音楽に合わせたものだったので、タイミングをとりにくかったんですよ。
でも、当時はまず紙で絵コンテを描いていたので、自分でストップウォッチを持って計りながら描いてから、最後に動画編集ソフト上でタイミングを微調整する作業フローだったんです。それが大変でしたね。
ー それで、Storyboard Proを導入していただいたんですね。デジタルツールを導入するにあたって、ハードルはありませんでしたか?
学生時代からデジタルツールを使っていたこともあって、「はじめてのツールでも柔軟にやってみよう」という感覚でした。そして、絵コンテを描くソフトの中では、Storyboard Proが1番良いだろうと当時から思っていたので、とにかくやってみたのです。
ほんと、最初はどうなるかは分からなかったんですけどね。だって、初の長編作品でしたし、そもそも絵コンテをちゃんと描ききれるかどうかさえ危ぶまれる状況だったのに、さらに初めてのソフトを使うっていうのは、結構危ない橋だったんですよ。でも、挑戦したいという願望もありまして。
そんな気持ちで1度試してみて、なんとかモノに出来たっていう感じでした。
初の長編作品に、ビデオコンテやStoryboard Proがあってよかったこと
ー 『ペンギン・ハイウェイ』は石田監督にとって初挑戦の長編作品だったわけですけど、長編になればなるほど、制作前に絵コンテやビデオコンテで話の流れを想定しなければいけないですよね。具体的にはどういう時に「Storyboard Proを使って良かった」と思われましたか?
まずは、絵コンテを描くとすぐにそれが映像になっている手軽さです。コンテを1本の映像として見られるので、客観的になれるんですよね。流れを掴むためには、すごい良かったです。
また、これから監督の仕事が増えていってもなるべく自分自身が絵描きであり続けたいという思いがあって、絵コンテの時点でできる限り決め込んだレイアウトをアニメーターさんに渡すようにはしています。正直なところ、今のスタジオの状況とも合わせてそうしているんですが…。
Storyboard Proって、カットごとにPSDを一気に書き出せるじゃないですか。この機能がえらい強力なんです。この機能のおかげで、書き出したPSDをそのまま制作進行さんにお渡しするだけで良いんです。
ちなみにStoryboard Proから書き出すPSDは、コロリドで使っているレイアウト用紙にぴったりはまるようなサイズで書き出しています。
PSDを受け取った制作さんが、それをレイアウト用紙の上に貼るんですね。もちろん、レイヤー構成を保ったままです。そうするともう、コンテの下書きが入った雛形ができるわけですよ。それをそのまま作画さんに渡すと。
そうすると、作画さんは最初から迷わずに作業できますよね。紙でやっていた頃は、制作さんが絵コンテを拡大印刷して、サイズに合わせて裁断していたわけです。それが全部デジタルデータ上で、効率よく出来るのはいいですよね。
ー 自分としてはコンテを描いてるだけだけど、同時にそのデータがその先の作業にも活用できるということですかね
そうですね。
別のお気に入り機能は、オニオンスキン機能です。この機能を活用することで、原画的な感覚で絵コンテを描けています。勿論、僕がやりすぎるのも良くなくて、やっぱりアニメーターさんにお任せしなきゃいけないところもあるんですけど、概ねコンテで予測を立てられるという意味で、やっぱりStoryboard Proを導入して良かったんですよ。
また、ひとカットの中で、起点になるコマを他のコマに複製して、オニオンスキンの代わりに使うこともありました。これをすると、元のコマの背景ごと複製先に引き継げるのが利点です。
あとやっぱり、紙じゃなかなかできないところとして、Unityソフトで作ったCGレイアウトを下敷きにして、その上でStoryboard Proで描いたんですよね。で、それも込みで連番としてPSDを書き出して渡していました。これも、非常にスムーズでしたよね。
ー 今回の『ペンギン・ハイウェイ』は、原作者さんがいらっしゃる作品でした。そうすると、制作過程でビデオコンテを原作者さんに渡して、確認していただくということもあったんですか?
ビデオコンテは必ず出すようにして、みんなに配っていましたね。原作者の森見登美彦先生がビデオコンテを観ていたかどうかは分からないです。ただ、音までつける余裕がなかったので、無音で観ていただくのもあれですが…。
ー なるほど。原作ものだと、ビデオコンテがあるとより説明しやすいのかな、と思ったんですよ。
スタッフによっては、ビデオコンテがあることでやっぱり助かったと思いますよ。
ー そうだと嬉しいですね、ありがとうございます。それでは最後の質問です。もう次回作に取り組まれていらっしゃるかなと思いますが、今後もStoryboard Proをお使いいただけそうでしょうか?
使います!使うつもりなので、先ほどたくさん要望をさせていただきました。
僕は、コンテを書く前にそもそも絵を描くことが好きでこの業界に入ったので、その絵を描くという部分でStoryboard Proのパフォーマンスが上がると嬉しいですね。今後のバージョンで、その部分が進化してくれることを期待しています!
ー ありがとうございました。
『ペンギン・ハイウェイ』 スペシャルトレーラー
まとめ
様々な活用法を伺うことができたうえに、最後は今後の制作でもStoryboard Proを使います、と嬉しいお言葉をいただきました!ありがとうございます。ご要望もたくさんいただきましたので、今後の改善を目指していきたいと思います。
お話の途中で、ビデオコンテが制作チームに与えた影響について伺いましたが、ご同席いただいたコロリド取締役の宇田さまにお話を伺ったところ、「クライアントワークだと特に、コンテではなくつなげた映像になっている方が分かりやすいとおっしゃる方がいらっしゃいます。そもそもアニメに詳しくない方にとっては、絵コンテは難しいですからね」と教えていただきました。
さて、石田監督にお使いいただいているStoryboard Proは、無料体験版を配布しています!ぜひこちらのページから会員登録をしていただき、一度お試しください。