Toon Boom日本支社は、Toon Boomのソフトウェアと日本のクリエイターたちの関係にフォーカスしたインタビューシリーズ『Toon Boom Interview Files』の連載をスタートします。第1弾となる今回は、2022年春にTOKYO MX、BS11で放送されたTVアニメ『ヒーラー・ガール』の原案・監督を務めた入江泰浩氏のインタビューをお届けします。 入江氏が、「今作の肝であるミュージカルシーンの実現に大いに役立った」と語るように、彼の制作に欠かせないツールだった絵コンテソフトStoryboard Pro。本記事では『ヒーラー・ガール』の事例からStoryboard Proの可能性についてお聞きしました。 続きを読む »
クラファンで11,716人の支援を得たMMORPG『Temtem』の”日本アニメっぽい”オープニングの制作スタジオにインタビュー!!
スペインのマドリッドにあるサンシャイン・アニメーションは、プリプロからアニメーション、彩色から編集まで、あらゆる工程におけるデジタル2Dアニメーション制作を請け負うスタジオです。このスタジオは、Toon Boomのアンバサダーでもあるイヴァン・カルモナさん、マリア・ブイトラゴさんの2人によって設立され、ディズニー・チャンネルや前回のブログでもご紹介したセルジオ・パブロスさんのSPAスタジオなど大手の仕事を担当しているほか、『I'm not not alone』と『Nagah´s awakening』などの自社のオリジナルアニメの制作も行っています。
このスタジオが最近、Harmonyを使用して、MMOPRG『Temtem(テムテム)』のオープニングアニメーションを制作しました。
スタジオ・クレマ制作で、ハンブル・バンドルが販売する『Temtem』は、2018年にクラウド・ファンディング上で11,716人の支援を得て始まったプロジェクトで、現在、開発中。早期アクセスが可能なゲームとして公開されています。
今回、イヴァン・カルモナ・マリンさんと制作チームの皆さんに、『Temtem』のオープニングアニメーションの制作背景についてお話をお聞きしました。
クラウドファンドで11,716人の支援を集めたMMORPG『Temtem』の2Dアニメプロジェクトは、こうして始まった!
ー このプロジェクトはどう依頼されましたか。また、今回のアニメーションは『Temtem』のプレイヤーにどう影響を与えると思いますか。
私達が依頼されたのは、様々なクリーチャーを集めてまわるMMOPRGのトレーラー用アニメーションです。ゲーム内でのチャレンジを通して楽しめる冒険や魔法、ファンタジーの要素を表現できるように制作しています。映像の中で、このゲームのメインキャラクターや、『Temtem』と呼ばれるクリーチャーたちを紹介する内容にもなっています。
アニメーションはゲームデザイナー達にとってインスピレーションを与えるものですし、逆にアニメーションを作る私達もまた、ゲームからインスピレーションを得ています。
アニメーション映像内には、ゲーム内に取り入れられたものがいくつかありますし、また逆に、ゲームから引用してアニメーションにしたものもあります。それが、プレイヤーのわくわく感を掻き立てるものになっていると思います。自分たちから面白い事をやってみようという気持ちで作ってみたんです。
この2Dアニメ映像によって、ゲームの新しい世界観が、多くの人により広くより豊かに、深みをもって語られるだろうと思っています。
ー インスタグラムでも投稿されていましたが、スタジオにとって、缶詰状態で掛りっきりになるほど、真剣に取り組んだプロジェクトでもあったようですね。なぜそれほどの案件だったのでしょう。
一番の課題だったのは、ゲームアートのクオリティーがかなり高かったので、それを維持するだけのアニメーションを作らねばならない事でしたね。また、ゲームのアクション全てをひと目で分かりやすく伝えねばならなかったので、それも大変でした。ショットあたりのキャラクター数も多く、動きも多様で、それをものすごいスピードで仕上げていく経験はいままでになかった事でした。
また、私たちは皆、アクションが多い映像が大好きなので、このプロジェクト自体にすごく興味を持っていました。クラウドファンディングが始まった時から注目していて、すでに私たち皆がこのプロジェクトのファンだったので、特に情熱的に取り組めた案件だったのです。
プロダクション素材の提供:Iván Carmona Marin / Sunshine Animation.
キャラクターやカメラの複雑なアクション、多くのキャラクターが登場するアニメーション制作で役に立った、Toon BoomのHarmony
ー このオープニングアニメーションの中には、たくさんの人物や多種多様なクリーチャーが登場しますね。それらのキャラクターのアニメーションはもちろん、2Dエフェクトやカメラの動き、様々な衣装など、高レベルな技術やアートが見られますが、この制作の中で最も満足した点はなんでしょうか。
オープニングショットは一番複雑でしたが、同時に出来上がった際に一番満足したシーンでもあります。カメラの動きをつけるために3D内で作業をしたので、一番技術的な課題が多かった部分で、フレーム毎にアニメーション化させています。
それから最終シーンも、背景が大きく動きにも速さがあったので、設計が一番大変だった部分です。技術的な正確さや精度が求められるシーンでしたが、同時に、即興で描いたりして、フレキシブルに対応することもできました。こうした技術的な部分と創造性の自由さとの独特なバランスが、このシーン作りで大事な事だったと思います。
ー 3Dゲームのデザインを2Dアニメーションに応用する、という課題についてはどう取り組まれましたか。
実を言うと、スタジオ・クレマは3Dにモデリングする前に、素晴らしい設計の仕事をしていて、すでにかなりの量の2Dアートを作っていたんです。なので、アニメーションの作業自体は、これまで自分たちが携わってきた仕事とそこまで変わらず、簡単でスムーズに行うことができました。
ー 今回の制作では、Harmonyのどういった機能やツールが役立っていますか。
実際に、今回の映像は全ての部分にHarmonyを使用しています。背景の絵以外、ビデオコンテからアニメーション、彩色、仕上げ、エフェクト、編集、撮影まで、すべてがHarmonyで行われました。皆さんが目にするすべてのシーンがHarmonyにより作られています。
このHarmonyの中で、特筆すべき機能やツールを挙げるとすれば、間違いなくノードビューとライブラリの機能でしょうね。
ー アニメーション制作に興味を持っている学生たちに何かアドバイスはありますか。また彼らが制作チームに入るためには、何が求められるでしょうか。
アーティストに求めるものを説明するのは難しいですね。私たちはすごく小さなスタジオなので、チームの誰もが、常に新しい課題や取り組みに挑戦しています。そういう事にいつも直面する気構えや、そのためのスキルは持っていなくてはなりません。私たちは30秒から1分のアニメーション動画制作に特化したスタジオで、3、4か月ごとのスパンで、全く違うスタイルのプロジェクトや、新しい事に常に取り組んでいますから。
最も大事なのは、自分が何か好きかを理解することです。学生たちのポートフォリオを見る時、私たちが大好きなのは、彼らが自分の仕事を楽しみ、自分の作品に時間と労力を注いだ事なんです。この仕事はキツイですし、作品を世に送り出すにはハードワークが求められますから。
ー この記事の執筆時点では、86種のTemtemのクリーチャーが公式に発表されていますが、実際に、描いたりアニメーション化していてお気に入りのものはありますか。
何人かのメンバーは、波のシーンで水から飛び出す巨大な水蛇のネスラが気に入っていますね。伝説の生き物のような雰囲気があるクリーチャーです。
あと、翼が生えている子豚のピッグエピックも私たちのお気に入りです。スタジオにぬいぐるみもあるんですけど、柔らかくって可愛いんです。
ー 最後に、今回の映像に携わった皆さんをご紹介ください
今回のプロジェクトでは、最大6人が同時に取り組んでいました。そのメンバーをご紹介します。
- マリア・ブイトラゴ(María Buitrago):コンテ、アニメーション、クリーンアップ
- イヴァン・カルモナ(Iván Carmona):アニメーション、クリーンアップ
- カロリーナ・アルバレザ(Carolina Álvarez:):彩色設計
- ルキア・ベネヴァンテ(Lucía Benavente):レイアウトデザイン、背景
- デビッド・ガウ(David Gau):背景
- ヨアン・アルバレザ(Juan Álvarez):ペイント、仕上げ
写真の提供:Iván Carmona Marin / Sunshine Animation.
サンシャイン・アニメーションの仕事に興味をお持ちの場合は、ぜひスタジオのインスタグラムやWebサイトをチェックしてみてくださいね。